障害者新聞

目と耳の障害者が作った新聞です。社会の本質を書いています。

車椅子の障害者の人として認められたいという感情はまっとうだと思う。

いま、脳性まひの障害者の本を読んでる。


☆☆☆


本のタイトルは「障害者に迷惑な社会(著者:松兼功」」である。

この本は迷惑な社会。と題するくらいにお前たち健常者に、いつも俺たち障害者は迷惑してるんだよ。

という強烈な皮肉を含んだ日記本である。


以前読んだ東大生の作文を収録して書籍化した、障害者のリアル×東大生のリアルより、ずっと文章の質が高い。

そこそこ文章力の高い本だと思っている。


それなりに苦労しているから、人生経験が豊富で苦しい思いをしてきたから、文章の質が高く、ずっしりと重いのだろう。

最近思うに、人生経験が豊富で強烈な悪夢のような人生送ってきた人が執筆するエッセー本(日記本)は、強烈な文章力のものが多いと感じる。


たとえば、犯罪を犯して刑務所に収監され、刑務所内にはお腹が減って無銭飲食を繰り返してきたためブチ込まれた障害者がたくさんいることを著した鬼の文豪、山本譲司さんの文章力は、異次元のように高い。


山本さんの過酷な経験が、文章の質を高めているのだ。彼の著した累犯障害者-獄のなかの不条理-は、読んでいてそう感じるのだ。

それはいいとして、この障害者に迷惑な社会という本は結構おもしろい。


あとあんまりグロくない。

著者である肢体不自由で電動歩行器(車椅子のような乗り物)に乗った松兼功さんが、なんとしてでも自分を人間として認めてもらいたいがために、様々なシーンで健常者に怒り狂う痛快な本である。


たとえば、吉祥寺駅周辺のバーで酒を飲んで駅前をたむろしていた松兼功さんが、警察に、お前障害者のクセに酒なんて飲んでんじゃねーよ!

と怒られるシーンがある。


ここで松兼功さんの怒号が警察官にぶち撒けられるのだ。おいポリ公!駅前に酔っ払いなんて吐いて捨てるほどいるだろ!

なぜ、健常者は酒を飲んでよくて、障害者はいけないのだ!


と、いちいち突っかかって怒り狂うのである。

障害者はかわいそうねえ~とか馬鹿げたこと言う人が多いけど、ここまでいちいちキレまくってたらストレスまったく溜まらない、痛快で楽しい生き様だろうなあと思う。


で、怒り狂うだけではなくて、自分の人間性、人として障害者の自分はこういうこと考えてるよ。

って毎回知ってもらおうと努力するところに、感心させられてしまうのだ。


たとえば、高校時代に好きな女の子の家の前を毎日うろついていると、近所の駄菓子屋の婆さんが、手足が不自由で歩行器に乗った松兼功さんを見て、いつも泣き出すのである。

あんな体になってしまいかわいそうねえ。と。である。


そういう差別的に見られるのは障害者やってると慣れちゃうものだが、松兼功さんは自分を普通の人間として、人として扱ってもらいたいのである。

だから駄菓子屋の婆さんに、俺はいまストーキング中なんだよ。

という旨を告げるのである。


で、毎日ストーキングした帰りに駄菓子屋へ寄って駄菓子買って、そのときついでに婆さんに、彼女まだ帰ってないの?

と自分のストーキング行為を暴露するのである。


すると駄菓子屋のばばあは最初は泣いてばっかいたのに、段々と、ああ、この子はただのストーカーなんだw。

普通の男子学生と同じことを考えてたんだ。


いつも辛いことばかり考えているんじゃなくて、普通の年頃の男の子としての感情をもった、普通の高校生なんだ。

と理解するのである。

ていうか、理解するまでストーキングするのだ。


もう何が主目的なのかよく分からんのだが、要するに彼は人として認められるために、かなりの努力をしているのである。

警察に対しても同じだ。


酒気を帯びただけで怒ってきた警察に、その後も酒を飲み続け、何度も交番の前を通りかかる。

で、今日も美味かったっすよ。お酒。ウケケー。

みたいなことを言うのだ。


これを毎日繰り返しているうちに、ああ。この人、ただの酔っ払いなんだ。と、警察官は理解するのである。

夜の吉祥寺の駅前周辺にいる酔っ払いとまるで変わりがないんだ。と理解するのだ。


ていうか、理解するまで酒を飲み続けるのだ。すごい執念だと思う。

個人的には家のなかで仕事しかしてないので、外とか出ないので、こういう人に自分を人として見てもらいたいと考え、それを直ぐに行動に移せる意味不明な行動力は、価値観は異なるものの魅力的に映る。


良い意味での魅力的な性格の持ち主だなと感じる。

ていうか、自分らしく、こうやって毎日楽しく生きるのが一番よね。

毎回人として認めてもらえないと、その都度キレるので、生きてて全然ストレス溜まらないだろうし。痛快な人生だと思う。


障害者の生き方の一つの答えだと言うことができる。

他者に理解してもらうためには、自分からぶつかっていかないと、自分がどんな人間なのか知ってもらうことは難しいのだ。


一度も女性を口説いたことのない男性は、一度も女性と付き合うことなくその人生を終えるのと論理的には同じである。

だから自分を知ってもらうために毎回キレて、人にぶつかっていくのである。


個人的には社会に出て行ったりしないけど、彼みたいな生き方、感情をむき出しにしてキレまくる生き方も、周りから偉そうとか言われるかもしれないけど、本人は楽しくて良い生き方だと思う。

障害の区分によって色んな生き方があって良いのである。


やはりヘーゲル先生の言う様に好きに生きやがれ!!が一番なのだ。

私も障害2つ持ちだが生活保護受給して好きに仕事させていただいている。自分も好きに、自分勝手に生きようと思う。


東大生が書いた本より、こっちのほうが文章力高くていいです。ただし、最高を求めるなら、山本譲司さんの本をおすすめする。

私が書いた山本譲司さんの本の感想はこちらから読めます。

東大生の本の感想は5本も書いてしまったのだが、もし読みたいのでしたら、下記の関連エントリーからどうぞ。

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