障害者新聞

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2つの努力(報われる努力と報われない努力)

【社会科学を使おう!】シリーズ最終話 2つの努力を執筆します。
私が前に働いていた会社の社長はものすごく優秀な方でした。
きっと、もう出会えない程に能力の高い人でした。

☆☆☆

彼は職場でもっとも能力の高い人間でした。
なのに、朝から晩まで一番長時間労働する人でした。

優秀な人間はその能力を体力の限界まで使い切るのはなぜなのか?

と、当時の私は考察していました。
私は社長室で働いていたから、彼の言葉は一言一句メモを取り、丸暗記しました。

彼の話していた言葉のなかでもっとも聡明で的を射た言葉は

  『人々は努力の適切なやり方を知らない』

です。

このあまりにも慧眼な言葉を社会科学を使って説明できたのならば、多くの人間が「こんなに努力したのに、なぜ私は報われないのだろう?」と悩むことは、もうなくなるのではないか?

そう考えました。
だから、私はここに「2つの努力」を執筆しようと決めました。

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【2つの努力(報われる努力と報われない努力)】

まずは、厚生労働省のこのグラフから
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出典:厚生労働省 雇用形態別の賃金カーブ(時給ベース)PDF

このグラフは雇用形態別の各年齢における賃金カーブを表したグラフです。

多くの示唆に富むグラフですが、みなさんはこのグラフを見ておかしい?と感じる場所はありませんか。

どの雇用形態においても同じだけ努力をしているし、非正規社員のほうが頭を使わない単純作業が多いため、実際には考える仕事の多い正社員よりも、非正規社員の仕事のほうが辛く苦しい仕事をしています。

なのになぜ、1番上の正社員の赤い線以外、年齢とともに賃金が上昇しないのでしょうか?

全労働者が同じだけ努力をしているのに、なぜ、正社員しか賃金が上昇しないのでしょうか。

その答えは正社員だけが「仕事の専門性が上昇するから」です。
社会における努力には、仕事の専門性が上昇する努力と、仕事の専門性が上昇しない努力があります。

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都内のコンビニでたまにものすごく一生懸命働いている店員さんがいます。

とても精力的に仕事をしています。なのに、グラフを見れば分かる様に、一生懸命働いていても、一生涯賃金は上昇しません。

どれほどの努力をつぎ込んでも非正規社員では賃金は上昇しないのです。

世間は「がんばれ」とか「努力しろ」とか無責任なことを言いますが、私に言わせればどんなに一生懸命努力したところで、報われない努力もあるのです。

すごく一生懸命に努力したのに、全然賃金が上昇しない努力が社会にはたくさんあるのです。

むしろ、労働者はみんな努力しているし、努力して報われるのはほんの一握りだっていうことを、社会に出て初めて知ることになるのです。

それはグラフを見て分かるとおり、正社員にならないと賃金は上昇しないためです。

非正規社員ではスタートラインにすら立っていないということです。

そのために、正社員になる方法を今回のシリーズで執筆したのです。

アルバイト店員は専門性が上昇しない職業です。
スーパーでのレジ打ちや、牛丼屋、ファミレス、本屋、すべての飲食店で働いている人達は経営戦略の立案という高い専門性をもった業務を行いません。

そのため、専門性が上昇しないことから賃金が上昇しないのです。

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正社員であっても考え方は同じです。

なぜ、経理部や総務部で働いている人たちよりも財務部や経営企画室で働いている人達のほうが賃金が上昇するのでしょうか?

経理部で毎年同じ仕事をしている勤続20年の女性社員よりも、財務部で経営資源に役立つ財務データの分析をしている女性社員のほうが賃金がはるかに上昇するのはなぜなのか?

それは専門性が上昇しているか、していないかの差です。

努力には専門性が上昇する努力と専門性が上昇しない努力があります。

非正規社員ではスタートラインにすら立っていないため、どれほどたくさんの努力をしても、まるで賃金は上昇しません。努力はまったく報われません。

私も20代の初めの頃、なんでこんなに努力をしているのに経済的に豊かになれないのだろう?朝5時に起きて労働しているのに・・・と思ったことがあります。

それは毎日同じ仕事をしていたためなのです。

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正社員であっても仕事が発展しないのであれば、専門性は高まらないため、賃金は上昇しません。

経済的豊かさと直接結びつくのは専門性を高める努力であり、専門性が高まらない努力は労働生産性が上昇しないため、どれほど一生懸命努力をしても、まるで意味のない努力になってしまうのです。

つまり社会においては一生懸命努力すること自体に意味がある訳じゃないのです。

そうではなく、一生懸命努力をして専門性を磨き、たくさんのものを生産したときに賃金が上昇するのです。

そのため労働者としてまずやるべきことは「専門家」になることです。

労働市場に出る前に知っておくべきことは、「あの人じゃないと駄目だ」と言ってもらえるくらいの高度な専門性を身に着ける事こそが、所得と直接結びつく努力だということを理解することです。

労働市場において理系が有利なのは、大学での勉強が直接その人の専門性を高めているためです。

みなさんも仕事をする以上、なんらかの「専門家」になるべきです。
そうすれば、あまりお金に困ることはなくなるはずです。

日々の労働においては、専門性を磨くことに着眼すべきです。

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社会に出て知ったことは、悔しいけれども、一生懸命の努力にはそれほどの価値がなかったことです。

20歳のときの私は、朝5時に起きて工場で怪我をしたりして血だらけになりながら働いていた。だけど、賃金は上昇しなかった。

それは私がしていた仕事は替えの利く仕事であって、別に私でなくても良かった。高度な専門性を問われない仕事だったから賃金が上昇しなかったのです。

努力してもしなくても、そこに意味はないのです。

そうではなくて考えて努力をすること。

専門性を高め、労働生産性を高める努力こそが、社会から直接評価される努力なのです。

みなさんはもう「なぜ、医者やエンジニアやパイロットは賃金が上昇するのに、一般事務や経理事務は賃金が上昇しないのか?」についての明確な答えを知っているはずです。

その答えは、毎日同じ仕事をしているか、専門性を高める仕事をしているかの違いです。

社会科学的に言えば、専門性は労働生産性を高めます。そして、労働生産性が高まるときにだけ所得が上昇するのです。

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これからは一生懸命に努力をするのではなく、一生懸命になって努力をして自分の専門性を高めていきましょう。

専門性が高まると自分の土俵においては絶大なる自信を持つことができます。

専門性を磨き抜くことで、この仕事なら絶対に誰にも負けないという無意味な自信を持つことができるのです。

「仕事に携わる以上、我々はプロフェッショナルでなければいけない。」

この言葉は、私が出会った人間のなかで最も優秀だった社長の言葉です。磨きに磨き抜いた専門性は人間に絶大な自信と責任感を与えます。

絶対に負けないという自信のなかで仕事をすると毎日生きていることが楽しくなります。

努力をするならば「報われる努力」つまり、専門性を高める努力をするべきです。

そうすると、また別の専門家や、すごい奴に出会うべくして、人は出会うのです。

労働市場に出たのならば、みなさんも専門性を磨き抜きましょう!

きっとすごい奴に出会えるはずです。
そして、経済的に苦しい生活を送る必要は、もうなくなるはずです。


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