障害者新聞

目と耳の障害者が作った新聞です。社会の本質を書いています。

高卒と大卒の生涯年収差を科学する

日本では高卒と大卒で4,000万円生涯年収に格差があります。高卒のほうが4年間多く働くのに、4,000万円少ないのです。

それはなぜなのでしょうか?


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前回のエントリーを読んだ方ならその理由を知っているはずです。そう、「生産性」の差が生涯年収の格差を生み出しています。


私はみなさんに学歴を付与することはできませんが、知性を授けることはできると思っています。


社会科学を使って企業の視点からそのメカニズムを見ていきましょう。


まず、労働市場を考えます。労働市場は直接的な市場ではなく、「派生市場」です。つまり企業は


「優秀な社員を多く雇いコレクションしたいのではなく、利潤の追求のために、人手不足を克服して、より多くの売り上げを増やしたい」


のです。


そのために、社員を増やしたいというのが企業側の視点です。


当然のことですが企業は、働き者の労働者を好みます。やる気があって、1人で3人分、5人分とたくさん働いてくれる労働者を採用します。そして、そういう労働者のことを経済学では「生産性の高い労働者」といいます。


既卒労働市場において、文系の高卒と専門卒と大卒で賃金を一律にしている企業があります。それは、いままで雇ってみて、文系における学歴が生産性との相関関係を持っていなかったという企業側の判断を示しています。


また、たとえば、京都大学を卒業して大企業に入社後、寿退職をしたとします。


出産後、社会へもう一度復帰するときに、労働生産性を高める「専門性」のない文系学部出身者がスーパーで時給900円のパートアルバイトをするのは、労働生産性に差がないと企業から見なされているためです。


もうひとつの具体例を挙げていきます。Aさんは高卒で一般事務をしています。彼女の仕事は一般事務ですので多岐にわたりますが、入力業務と資料のファイリングが主な仕事となっています。


生産量としては1日に資料のファイリングだけを行う場合、300ページのファイルを50冊作成できるものとします。Aさんの労働生産性は1日あたり50冊×300=15,000ページです。


Bさんは大卒です。理系の学部を卒業したデータベースエンジニアです。Bさんの仕事はデータベースを設計することであり、彼女は1日に3基のデータベースを設計しています。


彼女が作ったデータベースには1日あたり5万件の顧客が登録していて、5万ページを自動で生成し、データをサーバー上にファイリングしています。Bさんの労働生産性は1日あたり3基×50,000=150,000ページです。


・・・合理的な企業は利潤の追求のために動きます。Bさんの初任給がAさんの1.5倍だったとき、Aさんの10倍の労働生産性を誇るBさんを企業は喉から手が出るほどほしかるはずです。


文系が就職難であり、理系が就職に有利なのは、その専門性が労働生産性を高めるためです。合理的な企業は確実にBさんを採用します。社会では常にこのような出来事が起きています。


つまり、労働生産性の高い専門性を身につけられるかどうかが、直接的に所得と結びついているということです。