【なぜBEAMSのリアル店舗はいつも人がいないのか?】後編スタートです(前編はこちらから)。
リアル店舗の服が売れないもう1つの理由は、行動経済学の「公平性理論」を使うと明らかになります。
アパレルメーカーは翌年度まで服の在庫を抱えるリスクを取りません。そのためどんなに素晴らしいデザインと材質の服であっても、最終的にはセールをしてしまい、3割4割引きで年度内に完売してしまいます。
常連のお得意様はセールでない期間においても服を購入することがあります。
それは、そのブランドを信頼しているからです。
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ある日、服屋さんへ行き素晴らしい服を見つけたとします。その服の価値を私は15,000円と見積もったとします。
それに対して値札を見ると、価格は12,800円だったとします。
この場合、価値が価格を上回っているため、合理的な人間はこの服を購入することで経済的な幸福感を享受することができます。
よって、12,800円を支払って15,000円の価値のある服を購入するという行動を起こします(関連エントリー)。
8割の経済現象はこれで解明できるのですが、たまに人間が非合理的に行動することがあります。
その場合は非合理のメカニズズを科学する「行動経済学」を使わなければ、その経済現象を説明することが難しくなります。
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その服を私は15,000円の価値があると見なしました。15,000円の価値のある服が12,800円で売っていたため、私はお買い得だと思いました。
でも、私はBEAMSのリアル店舗でその服を買わなかったのです。それはなぜなのか?
その理由は、セールになってもし4割引きにされてしまったら、12,800円の服が7,680円で店頭に陳列・販売されることになるためです。
そうすると、その服に15,000円の価値を見い出し12,800円で購入することで満足していたはずが、セール期間中に7,680円で購入できてしまう人たちに対して、私は
「ズルイ!」
「不公平だ!」
と感じてしまったため、あらかじめ購入にブレーキがかかり、価値の高い商品なのに、自分が不公平になるのではないか?と感じてしまい購入をあきらめてしまったのです。
つまり、常連客であればあるほどセール期間中でなくても、BEAMSの品質とブランドを信頼して購入しているため、セール価格で買えないという損失が大きくなってしまうのです。
そうすると、「なら服なんて買わなくてもいいや」と服の購入自体をあきらめてしまうお客様が私みたいに出てきてしまうのです。
この現象が行動経済学の「公平性理論」です。
公平性理論は、割引率を下げることで対処することが可能です。要するにセール期間以外でも店舗に複数回足を運んでくれたりECサイトを熱心に利用してくれる常連客には、それなりのインセンティブ(誘因)を与えるべきだということです。
たとえば、過去の購入履歴が10万円を越えている人にはセール期間以外でも15%から20%引きにするとか、優遇されていることを顧客が自覚することと、セールになっても自分が損をしたという意識を感じさせないようにする制度を設計すれば、もっと売上は増えるはずです。
”普段の価格をもう少し下げて、セール期間中の価格をもう少し上げる”
だけでも総売上高と営業利益は増加すると私は考えています。商品の購入はあくまでも価値-価格のため、常連客が受ける不公平性を減らすだけでも、収益力は増加するはずです。
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ポイントカードのような囲い込み戦略は顧客満足度を減らすだけのためどの企業もやっていますが、純粋に商品の価値を高めてはいないので、意味のない戦略です。
日本の企業はどこか1社がやると同じ戦略を他の企業もみんなマネし始めます。
ビックカメラのポイントカード、ヨドバシカメラのポイントカード、Yahoo!ポイント、楽天ポイント、ヤマダポイントカード、これらは顧客満足度を下げるだけの囲い込み戦略であって、顧客満足度を高めてはいないし、商品とサービスの価値を高めてもいません。
実質不便なだけです。
それならいっそ「不便だから商品を買わない」という行動経済学が起こり得るのです。
経済を科学すると、それほど適切な社会システムが構築されていないことがよく理解できます。
顧客側の視点に立っていない企業が多いということです。