月間の利益がいくらで前年同月比で12%売上が増加したとか、そういう資料を作ることがよくあります。
その後、売上が増加した原因なども分析していくのですが、そもそも会計学的なものではなく経済学的に売上高とは何なのか?
について執筆してみたいと思います。
(今回のエントリーは少し難しいです。頑張って着いてきてください。
こちらもできる限り簡易に、分かりやすい執筆を心がけていきます。)
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【物が売れるメカニズムについて】
会計学も経済学も社会科学の一学問ですが、「売上」に対する概念はかなり異なっています。会計学の売上は「収益」です。
収益における売上高とは「本業の儲け」のことです。
そして企業における副業の儲けのことを「営業外収益」と言います。
これが経済学だとまず総余剰の計算を行います。
総余剰とは、モノが売れたときの売り手と買い手両方の経済的幸福感の向上のことをいいます。
総余剰の計算式は
総余剰 =(買い手にとっての価値-買い手が支払った金額)
+(売り手が受け取った金額-売り手の費用)
です。
買い手側の経済的幸福感は「価値-価格」であり、売り手側の経済的幸福感は「価格-原価」ということになります。
簡略化すると
総余剰=価値-価格+価格-原価
になるため、真ん中の「価格」を相殺すると
総余剰=価値-原価
となります。
また、買い手側の幸福感は前述したように
買い手側の幸福感=価値-価格(値段)
となります。
これがミクロ経済学における価格戦略の原点です。
よくサラリーマンが大学でもっと真面目に勉強しておけばよかったと言う事がありますが、経済学の基本原則を知っているか知らないかでそこそこ行動に差が付くと私は考えています。
たとえば、この買い手の幸福感の計算式である「幸福感=価値-価格(値段)」という計算式はモノが売れるメカニズムを表しています。
この幸福感が0以上のとき、モノが売れます。
例を挙げて見ていきましょう。
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ある商店街に自動販売機があります。
10月の涼しいある一日において、この自販機の売上はジュース5缶だったとします。
その場合、売上が発生するメカニズムはこうなっています。
■秋の涼しい1日における自動販売機の売り上げ発生メカニズム
- 缶ジュースの価値は150円である人・・・1名
- 缶ジュースの価値は140円である人・・・1名
- 缶ジュースの価値は130円である人・・・3名
- 缶ジュースの「価格」は130円
- 缶ジュースの価値は100円である人・・・10名
- 缶ジュースの価値は80円である人・・・15名
この場合、缶ジュースを買った人は5人(売上高650円)です。
もしも缶ジュースの価格が100円だった場合、売上高は650円から1,500円(15人×100円)に増加します。
買い手側の幸福感は価値-価格(値段)のため、価格より上段にいる人が缶ジュースを購入しているのです。
人間は商品を見たとき、その商品の価値を無意識のうちに算定しています。そしてその価値は人によってぞれぞれ異なり、また、価値が価格を越えたときに物が売れるという現象が起こります。すべての財・サービスにおいてこの原則は適用されます。とても経済学的ですね!
秋の涼しい1日においては、缶ジュースの価値を130円以上と見積もった人が5人しかいなかったのです。そのため、5名が缶ジュースを購入したのです。
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2つ目のケースを挙げていきます。
今度は同じ商店街の同じ自販機ですが「季節」だけを変更しています。
通行人は同じ人数ですが、夏の猛暑日におけるケースを見ていきます。
夏の猛暑日における売上発生のメカニズムはこうなっています。
■8月初旬、気温35℃のときの自販機の売上発生メカニズム
- 缶ジュースの価値は150円である人・・・12名
- 缶ジュースの価値は140円である人・・・10名
- 缶ジュースの価値は130円である人・・・5名
- 缶ジュースの「価格」は130円
- 缶ジュースの価値は100円である人・・・2名
- 缶ジュースの価値は80円である人・・・1名
夏の猛暑日において缶ジュースを買った人の数は、缶ジュースに130円以上の価値を付けた人の合計なので、27名(売上高3,510円)です。
秋の涼しい1日と比較して、売上高は5.4倍に増加しています。
さらに夏の猛暑日では、価格を140円にしても缶ジュースを買う人は5名減るだけなのでまだ22名もいます。
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これを見て分かることは、経済学において「価格」がとてつもなく大切な概念だということ。そして人々が物にどれだけの価値を設定しているのかを調査する行為(マーケティング)が価格戦略において、どれだけ大切な行為であるのかが非常によく分かるはずです。
夏の観光地や冬のスキー場で缶ジュースの価格が割高で販売されているのは、利潤の最大化のためにその価格がもっとも適切であると算定されたからです。
価格を高く設定しても売上が落ちないのであれば、利潤を最大化するために、企業は適切な価格戦略として「値上げを行う」ということです。
次回のエントリーでは、企業における価格戦略について見ていきます。