【'盲ろう者の思考力】シリーズスタートです。
今回扱うテーマは「マスコミの行動原理を科学する」ことです。最初に、マスコミはどのようなときに記事を執筆するのか?
その答えは「書いた記事が売れるとき」です。
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では、書いた記事が売れるのはどのようなときなのか。それは「めずらしい出来事が起きたとき」に他なりません。
ということで、めずらしい出来事を探してみたいと思います。私たちの年金はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という官僚の天下り機関によって、勝手に運用されています。
このGPIFという機関は超優秀な官僚が年金を運用しており、過去15年間で45.4兆円もの利益を生み出しています。
だけど、マスコミはこれを報道しません。
それはなぜか?
めずらしい出来事ではないため、記事を書いても売れず、売れない記事は金にならないためです。
彼らは売れる記事を書いているのであって、常に役立つ記事を書いているわけではありません。
めずらしい出来事を記事にしているだけです。
■GPIF過去15年間の運用実績
出典:GPIFの運用実績
15年間で45.4兆円の運用実績とか、恐ろしい利益です。
もはや国家予算並みに利益を出していますが、マスコミはそれを記事にはしません。
なぜなら、常に運用益を生み出し、利益を出し続けている機関があることは、彼らにとって「当たり前の出来事」であり、めずらしい出来事ではないためです。
めずらしい出来事でないと記事が売れません。売れない記事をマスコミは書きませんし、報道しません。よって、GPIFのこの素晴らしすぎる功績は記事になりません。
上の図を見ると昨年度(平成27年度)は、平成22年度から5年ぶりにGPIFが年金の運用損失を発生させていることが分かります。
損失額はたったの5.3兆円です。
だけど、45.4兆円の運用利益と比べるとわずかな損失の5.3兆円ですが、単独で5.3兆円と表記すると膨大な額の年金が、GPIFの失敗によって損失として生み出されているととらえることもできます。
この5年ぶりの損失は「めずらしい出来事」です。めずらしい出来事は記事にすると売れます。
昨年まで50兆円年金を増やしてくれた官僚が、5年ぶりに5兆円の損失を生んでしまった、が正しい解釈です。
それでは、日本のマスコミはこの5年ぶりのめずらしい出来事に対してどのような報道をしたでしょうか?
正解はこちらです。
■朝日新聞
出典:年金の運用損、昨年度5兆円超 GPIF公表は参院選後 朝日新聞
■時事ドットコム
出典:公的年金、運用損5.3兆円=過去3番目の規模 時事ドットコム
■産経新聞
出典:27年度の運用損失は5・3兆円 産経ニュース
とてつもなく優秀な官僚が5年ぶりに失敗をしました。そのときのマスコミの反応がこれです。
5.3兆円の損失を差し引いてもなお、45.4兆円も年金を増やしてくれた。そんなGPIFに対する報道がこれなのです。5.3兆円の運用損失を非難した記事しか、彼らは書かなかったのです。
本質はどこにあるのか?形而上学的循環はどこにあるのか?が良くわかる記事です。
優秀な人間が弱っている、立場が悪くなっている、困っているときにだけ彼らは記事を執筆します。それは、めずらしい出来事のほうが記事が「売れるから」です。彼らの行動原理はここにあるということです。
「今日も渋谷は若者であふれていました。」
という出来事では彼らは記事にしません。そうではなく、
「今日は若者の街渋谷で、おばあちゃん達が行進していました。」
のように、めずらしい出来事があったときにのみ、記事を執筆しています。それは、前述したようにめずらしい記事のほうが売れるからです。
この例題にしても渋谷の実態は把握できません。
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メディアにとって大切なことは、その記事が売れるかどうかではなく、その記事が社会の本質を表しているかどうかであり、読者の役に立つかどうかのはずです。
端的な部分においてのみスポットを当てた記事は、物めずらしいため、確実に売れます。だけどその記事は極めて質が低く、社会の本質を表してはいないのです。
最近インターネットが確立してからマスコミの売り上げが減っています。マスコミ関係者はその原因を解明していませんが、私からすると自分で調べる癖がついたためであると考えています。
社会がどのように構築されていて、マスコミはそのうちのどの部分にスポットを当て、部分的に記事を書いているのか?全体のうちのどの部分が記事として配信されているのか?を知力を駆使して自分で調べる。
「なにが正しく、何が間違っているのか」
その判断をマスコミに委ねるのではなく、自分で情報を能動的に取得し、自分で思考し、決断を下す。
マスコミの収益力の低下は、そういうことができる時代になったことを表しています。
思考力によって差が付く時代をいま、私たちは生きているのです。