障害者新聞

目と耳の障害者が作った新聞です。社会の本質を書いています。

終身雇用廃止の最大のメリットは、日本の若者が何度でも人生やり直せることである。

終身雇用の廃止についてトヨタ自動車の社長が発言してましたが、日本の新聞には経済学を使ったまともな論説が何一つありませんでした。

それ以前に、記事自体がほとんどありませんでした。


☆☆☆


私たち新聞社は経済が分からない。だから終身雇用が廃止されたとき、どのような社会になるのかが分からず、記事を1本も書けない。

このように日本の新聞は体を成していません。不勉強です。


■テレビはこんな感じ

トヨタ社長の「終身雇用守るの難しい」発言

出典:Yahoo!ニュース(https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20190513-00000040-ann-bus_all

テレビもトヨタの社長の発言をただ垂れ流すのみであり、これからどのような社会になるのかすら理解できていません。

分からない、分からないと言い続けて30年間不景気やってる恥ずかしい国です。


新聞もテレビもゴミだから。このままじゃ駄目だと思って経済学書1,400ページ読み終わったのが今年の2月でした。

そんな訳でこのエントリーでは、経済学的に終身雇用廃止の是非について、論理を組んで執筆していきます。

ちなみに私は終身雇用廃止に大賛成の人間です。


まず「規制」について。

終身雇用とは規制の一つです。どんな規制なのでしょうか?


それはとても簡単です。

22歳で大学を卒業した人を正社員として企業が雇う場合、本人が辞めたいと言ってこないのならば、65歳まで解雇してはならない。

これが終身雇用という規制です。


規制というものは労働者側からしたらどんなものなのでしょうか?

能力が低くても、成果が出せなくても、頑張ってさえいれば規制によって解雇されません。


終身雇用制度は、一生懸命がんばっていれば、能力が低く成果を出すのに時間がかかっても、その間ずっと解雇されず安心して働くことができる制度です。

つまり規制というものは、あればあるほどそれに守られた側は有利になります。


逆に不利になるのはなんでしょうか?

それは「規制緩和」です。規制緩和とは、規制が緩和されなくなってしまうことです。


派遣法の規制緩和が起きたあと社会はどうなってしまったでしょうか?

正社員を企業は雇わず、規制に守られていない派遣社員契約社員を雇い始めました。規制で労働者が守られなくなった。


だから非正規社員が増加して、平成の31年間で労働者の賃金が平均して100万円以上減ってしまったんです。

規制とは通常、弱者を守るものです。


だけど今回の終身雇用廃止の規制緩和だけは、むしろ逆転現象が発生します。そう。労働者側が得をするんです。

なぜでしょうか?


終身雇用という規制が廃止される。つまり規制が緩和されるにもかかわらず、なぜ労働者が有利になるのでしょうか?

その理由は3つあります。


以前、私はツイッターで都営バスの職員なんて不要だから。とツイートしたら、私たちの雇用はどうするのか!

という苦情が来ました。


確かにそうです。

都バスの職員がもし解雇されたら民間企業に同じ給料では再就職することは不可能です。

それは実力がないからです。


実力以上にお給料を受け取っていたのは、そのお金が税金だからです。民間は完全実力主義ですので、働いた分しかお給料は支給されません。

働いた労働量以上のお給料を受け取っていたのは、そのお金が税金だったからです。


正社員も同じです。一度正社員になってしまったら努力しなくても一生安泰です。

解雇されないぬるま湯にずっと浸かっていたい人たちにとって、


この終身雇用という規制は最高に良い制度です。

私も日本のなかだけで勝負しているのであれば終身雇用の廃止は、それほど賛成でもありません。


だけど海外の企業はすべて終身雇用なんて規制がありません。日本で売ってるユニクロの服は中国製です。

なぜ中国製なのでしょうか?


それは日本で作るとコストが高くなってしまうからです。トレーナーが1枚1万円を越えてしまうためです。

海外では能力の低い労働者を企業は解雇できます。


日本の企業だけできません。

50歳過ぎてお給料の半分も働いてない、社内失業者を、会社でネットサーフィンしかしていない、なんの価値も収益も生み出していない労働者を、日本の企業だけは面倒を見ています。


その人達の人件費も製品の価格に付加されるため、日本の冷蔵庫や洗濯機は海外ではまるで売れません。

当たり前です。


同じ性能でも日本製だけ高いからです。

海外でボロ負けしているのは働かない労働者を企業が面倒見ている、その人件費まで製造原価に付加されているため、コスト高になりコストパフォーマンスで日本製が海外製に敗北してしまうためです。

海外で自動車を売りまくっているトヨタ豊田章男社長が、終身雇用の維持は難しい。とおっしゃっているのはそのためです。


よって、終身雇用を廃止すれば日本企業の競争力は増加します。価格が安くなり売上が増え、GDPが増加します。

失業者は増えるものの、企業の景気がよくなりお給料も増加します。

これが終身雇用廃止のメリットの1つめ「国際競争力の上昇」です。


終身雇用廃止のメリットの2つめは賃金が上昇することです。

なぜ、日本の企業は内部留保(過去の儲け)を溜め込み、賃金を上昇させてこなかったのでしょうか?


労働者のお給料を20年間も減らし続けてきたのでしょうか?

その最大の理由は、一度正社員を雇ったら65歳まで解雇できなかったためです。


22歳で雇ってしまったら65歳までの43年間を継続してお給料を支払い続けなければいけないためです。

いま業績が好調でも43年後もお給料の支払い義務があります。


営業部で年間1億円売り上げてる社員がいたとしても、年収は600万円や800万円程度です。

なぜでしょうか?


年間3,000万円の利益を生む社員がいても、受け取れるお給料はたかだか800万円程度であり、2,200万円は企業の利益になります。

それはなぜでしょうか?


なぜなら、いま働いている社員の43年後までお給料を支払う義務が企業にあるためです。

いま業績がよくても内部留保(過去の儲け)を溜め込んでおかなければ、43年後もお給料を継続して支払い続けることはできないからです。


また、500万円お給料をもらっていて250万円分の労働しかしていない人にも、企業は65歳までお給料を支払い続けなければなりません。

会社でダラダラ働いてるやる気のない社員の面倒も見なければいけません。解雇できないためです。


よってがんばってたくさん働いてる優秀な社員の本来受け取るはずだったお給料が、こういう赤字社員のお給料に支払われているため

日本の企業内では優秀な社員であればあるほど努力が報われない現実を知ることになる。


一生懸命がんばって働いても、そのうちの一部分しかお給料として受け取れず、本来自分が受け取るはずだった

お給料が、なにもしていないまったく働いていない社内失業者に支払われているのを見て、優秀な社員ほど絶望するんです。


終身雇用を廃止すれば社内失業者を全員解雇できます。

一生懸命働いてない、喫茶店で昼寝してるだけの社員や、ネットサーフィンしかしてない社員を日本の企業もやっと解雇することができます。


優秀な社員にはその成果に応じて高いお給料を支払うことができるようになり、企業の労働分配率(売上に占める人件費の割合)が増加し、43年後も面倒見なくて良いのだから、その分賃金が全体的に上昇することになります。


もちろん能力が低い社員は解雇されるため失業率は増えますが、43年後まで利益を蓄えなくて済むので、賃金の支払総額が上昇し、景気が良くなります。

これが2つめのメリットです。


そして終身雇用廃止最大のメリットが3つめです。終身雇用廃止最大のメリットは、若者が人生をやり直せることです。

昭和の時代、企業の非正規社員比率は2割前後でした。それがなぜ平成31年間で2倍の4割まで増えたのでしょうか?


■日本の正規と非正規社員の推移

日本の正規・非正規社員雇用者数推移グラフ

出典:総務省統計局(https://www.stat.go.jp/info/today/097

その理由は43年後に企業が存続しているかどうかもわからないのに、その間絶対に解雇できない正社員の雇用はリスクが高すぎるためでした。

人口減少社会では43年後どころか3年後、5年後の売上高すら分からないのに、一度雇ったら65歳まで面倒を見なければいけない、正社員の雇用はリスクが高すぎたのです。


では、なぜ終身雇用を廃止すると若者にメリットが発生するのでしょうか?

日本は22歳の新卒で就職活動に失敗すると、その後、一生非正規社員となり人生が終わってしまう国でした。


職場経験のない社員を企業は中途で採らなかったためです。

それが終身雇用が廃止されることでどのような社会になるのか、みなさんは予想できますか?


企業は22歳で雇った社員を解雇することができるようになります。当然ながら不真面目な社員は20代で解雇されます。

するとどうなるでしょうか?


当然のことながら解雇した分、労働力が足りなくなります。

よって22歳の新卒時に就職活動に失敗した求職者にも、目を向けるようになります。


新卒は4月からしか入社してこないため能力の低い社員を5月や6月で解雇してしまった場合、1年間人手が足りない状態にはせず、通期で新卒以外の求職者も募集するようになります。

そのため大卒時に就職活動に失敗した若者にもう一度正社員になるチャンスが訪れます。


若者が一度就職活動に失敗しても、人生を何度でもやり直すことができる社会になります。

なぜなら、もし24歳や25歳の一度失敗した若者を企業が雇ってもんのすごく使えない社員だった場合(ほとんどそんなことはないが)、そしたらまた解雇できるからです。


解雇してさらに優秀な社員を雇えばいいだけだからです。

つまり何が起きるのか?

終身雇用が廃止されるとクビになる社員が大量に発生します。失業者が大量増殖します。


しかし、それと同時に、終身雇用が廃止されると、企業はいままでより簡単に正社員を雇用し始めます。

なぜなら、駄目だったらまた解雇すればいいだけだからです。


よって日本の雇用が流動化します。雇用が流動化すると、クビになるリスクは増加します。

努力しない人間、喫茶店でダラダラしてたり、追い出し部屋や窓際にいて、何も価値を生み出していない人間はすぐクビが飛びます。


だけどその分、正社員に43年間お給料を支払い続ける義務がなくなるため、企業の正社員雇用リスクが減少することから、企業は簡単に正社員を雇用し始めます。

簡単に解雇できるってことは、簡単に内定を取れるってことなんです。


一度入社したら一生安泰な時代は終わり、入社後も努力をし続けなければならなくなるけど、その分、解雇されたとき雇用が流動化されているから簡単にまた別の会社で正社員として働くことができる社会。


つまり終身雇用が廃止されると、何度失敗してもやり直せる社会になる。

これが終身雇用廃止の最大のメリットであり、この恩恵を一番受けるのは、日本の若者であり、既卒のフリーターやパート・アルバイターが正社員になれるチャンスがぐっと上昇します。


逆に40代や50代で仕事量に対してお給料が高すぎる社員は、すぐにリストラされます。

いままで解雇できずに追い出し部屋でなにもしなくていいですよ。


と言われてしまった能力の低い、能力を高めず生産性の低い社員は、終身雇用が廃止されると真っ先に解雇されます。

入社しても気を抜くことができない社会。


入社したら一生安泰から入社後も自分のお給料以上に働かないと解雇される社会。だけど、一度失敗した若者にもまたチャンスが与えられる社会。

それが終身雇用が廃止されたときの日本の社会の姿となります。


個人的には日本人のほとんどがお給料以上に働くことになり(そうしないと解雇される)

労働者の一人あたり売上高が上昇することから生産性が上昇し、お給料の総額が増え、所得が増え、景気が良くなり、経済が活性化するため、終身雇用の廃止は数ある規制のなかでは珍しく害悪のほうが多い規制のため、これが廃止されるのは大賛成です。


年をとったら年をとった分だけ多く稼げる能力がないと、入社後も努力を続けていかないと、クビになる社会。

翻れば努力してる若者にも中途採用で正社員雇用の道が開かれる、適切な社会になるのです。