障害者新聞

目と耳の障害者が作った新聞です。社会の本質を書いています。

【書評】障害者の経済学を読んで

最近、テレビを見なくなりました。

そして、ネットのニュースも、一切読まなくなりました。


☆☆☆


そんで、それらの余った時間で私が何をしているのかというと、専門書を読み耽るようになりました。


理由は、テレビとネットのコンテンツの質が低すぎるためです。読む価値すらないと考えているためです。


書籍は1冊出版するのに専門書であれば、著者は大体1年以上研究して、やっと出版されます。


よって、著者の1年分の人生を私は1週間で修得してしまえるため、たくさんの専門書を読みまくると、私は1,000年以上生きるのと同じ人生経験を擬似的に体験することになります。


世界長者番付1位のビル・ゲイツ氏が本を読みまくっているのも、このためです(たぶんw)。読書がお得と言われるのも、このためです。


最近は対談本のように専門家や有識者2人を喋らせて、それを一気に本にしてしまうという楽をして出版された本もありますが、専門書籍にはそういう類のものがありません。


で、今回読んだ「障害者の経済学」ですが、結構おもしろかったです。点数を付けるなら5点満点中3.5点くらい付けることができるくらいには、読んでて楽しかったです。


減点の1.5点は文体(文章スタイル)が劣悪だったためです。


この障害者の経済学の文体はそのすべてが
(例えば)

  • 障害者の雇用は大変らしい。
  • 施設の職員の熱意は相当なものだそうだ。
  • 障害者の雇用はこうすれば増えるかもしれない。
  • 養護学校の学費は高すぎると言われる。

・・・このように全部憶測なんです。


人づてに聞いたところによると、~~なのだそうだ。~~らしい。とか、慶応大学の教授ってこんな適当な文章スタイルでもなれちゃうんだなっていうのが、少し驚きでした。


こんな文体(文章スタイル)に私立大学の年間の学費100万円とか、もはやギャグだなと。金をドブに捨てるようなものです。


これでは、慶大卒のブランドだけ取得できても、実力を獲得することができません。太宰治の文体の真逆を行っているという印象を受けます。


太宰治文体とは、「私は読者へ向かって真っ向勝負だ!!」という文体です。


そのため、文章の語尾に「~~らしい」とか「~~かもしれない」という憶測と断定を絶対に使わないのです。


全部憶測。全部推察。それでも本が出版できるほど日本の知性は劣化してしまったんだなという印象を受けました。


著者は一度、障害者著作の最高峰、山本 譲司渾身の力作、「累犯障害者-獄の中の不条理-」を読むべきです。


圧倒的な文章力と障害者のリアルに震撼させられるはずです。尋常でない文章力による受刑者になって刑務所のなかで障害者と語り合い、その社会システムの齟齬を鋭利な文章でエゲツないほどに不条理と悪循環に立ち向かった名著です。


学者がいかに世間知らずなのか、刑務所の中から見た障害者の地獄の日々を送る姿を見て、理解されるべきです。


ただ、読んでてためになる知識もありました。
たとえば、ダウン症障害の場合、40代以降の高齢出産になるとダウン症の障害児が生まれる確率が10倍になる、とか。


養護学校での障害者一人当たりの1年間の教育費が930万円で福祉が聖域化しているけど、一般人はそれらを知らないとか。


よく調べてあるなと関心しました。
私の知らない知識だったし、そういうのを足を使ってインタビューして書籍として出版する価値は、とても高いと感じました。


全体的に広く浅く障害者事情を取り扱っており、福祉施設だと月給数千円だから民間企業に就職すべきだ!とか、そういう一般論が書かれています。


だけど、民間企業での障害者雇用の実情については、何も書かれていませんでした。


それはこの記事に私が執筆していますが、障害者では出世して部長や課長になることはできず、そのほとんどが非正規の契約社員です。


よって、向上心の高い障害者は朝から晩まで単純作業をするだけであり、その後、頭痛が止まらなくなり精神を壊すか、それか思考停止して野心をなくし、大志を抱かなくなってしまいます。


考える仕事、知的な仕事、部下をマネジメントする仕事が民間企業で障害者が得ることはできません。


私の知り合いに難聴のデータベースエンジニアがいて、かなりの高給取りですが、そういう事例がまるで載っていないことに(ていうか、肢体不自由と視覚・聴覚障害者の雇用の実態を調査してない)ことに、そんなに情熱的に障害者雇用について研究していないんだなと感じました。


非正規社員でも雇ってもらえて幸せ。障害が悪化するまで非正規社員としてでも、雇ってもらえて嬉しいです。


というお決まりのフォーマット(型)の外に出た、向上心と野心あふれる障害者や、私のように月給手取りで30万円じゃあ安すぎるとキレて会社辞めてフリーランスになって、朝から晩まで仕事している超金持ちになるための野心を捨てきっていない、


人生を諦めていない独立自尊の道を歩む人間についての記述はまるでなく、あくまで一般論だけが示されていたのが残念だなと感じました。


ただ、主観ではなく、マクロ(国全体)のデータは少し載っていて民間企業が障害者の雇用を増やしているデータなどはそこそこ有用な情報かなとも思いました。(当然、全部非正規社員での雇用です)。


それくらいの書籍であり、もっと莫大な野心をもった障害者が世界最高の数学に挑むとか、フェルマーの最終定理を真っ先に解答してしまうほどの知性を持った障害者とか見つけ出して、そういうたぎる情熱さえあれば人生上手くいくみたいな文章が書いてあったならばなと思いました。


野口英世ルーズベルト大統領もエジソンも全員障害者なのだから、世界最高の数学者や物理学者なんてほとんどそうなのだから、民間企業で非正規社員として雇ってもらえて嬉しいです。

とか、低い志(こころざし)で生きててどうすんの?

っていうのが私の所感です。


生きている以上は死ぬ気で生きないと駄目だなっていうのが、読後の感想でした。