長年サラリーマンを勤めてきた父との会話から、知り得た知見をここに伝えられたらと思います。
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まずは、
1.大企業病とはどんな病気なのか?
企業とは、基本的に縦社会です。さらに大企業ともなると、縦社会でないと組織の規模が大きすぎて機能しなくなります。
組織の末端である一般社員が社長と会話することは、1年に1度か2度程度です。
ベンチャー企業だと目の前に社長がいたり、そもそも社長室がなかったりするので、みんなと一緒のフロアで世間話や趣味の話もしますが、大企業の場合50階建ての本社ビルの最上階等に社長室や幹部の部屋があり、おいそれと立ち入りを許される場所ではないのです。
風通しの良い活性化された会社の場合、それがどこから発せられた企画であったとしても、その企画が優れているのであれば、1つ1つ縦に登っていき、社長の目に留まることになります。
だけど、大企業病を発病した企業においては、風通しが悪いため、どれほど優れた企画であったとしても、それが社会に劇的な変革をもたらす革新的イノベーションであったとしても、1つ1つ上に上がることなく、企画は実現に到ることがなくなるのです。
もともと検索エンジンは日本のほうが優れたものを作っていましたが、Googleのイノベーションによって無料で検索エンジンを社会に提供し、広告によって収益も獲得できてしまう常識はずれの革新的イノベーションが生まれました。そのため、社会全体がより豊かになりました。
大企業病を疾病した会社では、同じ革新的イノベーションの企画が生まれても、上まであがって行くことなく、そのイノベーションは実現することなく終わってしまうのです。
これが「大企業病の全容」です。
2.なぜ、大企業病が発病するのか?
大企業病が発病するメカニズムは、まず大企業の固定費が巨額なためです。
たとえば売上高10兆343億円の日立には308,178人の従業員がおり、平均年収は868万円です。
もしも、1年間日立の売上高が0円だったら、従業員30万人のお給料を支払うだけで、平均年収868万円だから、合計すると2兆6,749億円社員に支払う給与が必要になります。
他にも大企業は営業所や本社・支店ビルや研究施設が沢山あるため、固定費の金額が極めて大きいのです。
そのため、ベンチャー企業のように大きな変化を次々とやってのけることは極めて難しくなります。
少しでも失敗したら巨額の赤字が発生し、固定費を回収できないため赤字になってしまうのです。
だから大企業の幹部は「今までこのやり方で黒字化してきたのだから、今後もこのやり方を続けよう」という思考メカニズムに陥るのです。
よく、変化!変化!言う人がいますが、変化とは、いままでよりも業績が良くなることではありません。良くなるか悪くなるかのどちらかに変化するということです。
そしてどちらに振れるのかは、やってみないと分からないのです。
数兆円規模の固定費を回収し黒字化するのに、変化は極めてリスクが高いことを誰も論じません。
固定費が発生している以上、大企業のある程度の膠着化は仕方のないことなのです。
ただ、それがずっと続くと「今までどおりのやり方が一番安定感があっていい」。成果を残してきた「幹部社員だけで意志を決定し、成果がまだ出ていない人の意見は聞く必要がない」という変遷で病気が疾病し、大企業病が発病してしまうのです。
過去の実績に囚われず、どんな立場の社員の意見でも1つ1つ上へ汲み取ろうとする企業風土が失われ、大企業病は発病していくのです。
しかしながら、30万人もの意見に耳を傾けるのは極めて困難な行為であり、だから日本の大企業はずっと低業績で、似たような製品ばかり毎年作ってきたのです。
成果を残してきた一部の幹部社員だけが執行し、経営しているのが大企業病を患った企業の特徴です。彼らは「今まで通りのやり方を大変に好む」という習性を持っています。
そのため、デジタルカメラも冷蔵庫も洗濯機も毎年同じような製品を作ってしまいますし、革新的な製品イノベーションが生まれても、それが縦社会の企業において、1つ1つ上に上がっていくことができないでいるのです。
ただし、これはベンチャー企業のそれぞれの社員が「考えたら即実行」と比べて、解決が非常に困難な業務であるため、簡単に大企業を批判することは出来ても、解決策にはいつも困難を極めます。
企業風土を変化させるマネジメントというものは、非常に難しいものだということを覚えておくといいと思います。
皆は叩きやすい大企業をすぐに批判しますが、大企業病の疾患を治療できる批判者は日本にはいません。
そう簡単なことではないから、日本には似たような電化製品が溢れ返り、それは大企業病を患っていることの証左であり、今も大企業病は継続しているのです。