最近、日本では一風代わった商品を、企業が企画・開発しています。
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たとえば、ファミリーマートの忖度弁当やロッテリアのはみだしステーキバーガーなどです。
でも、ほとんど売れません。少し売れたとしても話題性を呼び、ブランディング(自社名の認知度を高める戦略)しか得られず、大ヒット商品にはなり得ないのです。
企業側も薄々それを理解していて、数量限定や期間限定商品として販売しています。
■ファミリーマートの忖度弁当
出典:ファミリーマートのお弁当(http://www.family.co.jp/campaign/spot/201712sontaku)
発売したはいいものの…。
販売後、現場はこの通り。まるで売れてない。
出典:ライブドアニュース(http://news.livedoor.com/topics/detail/13976483/)
2日で13個中12個廃棄。ものすごい大赤字です。
■ロッテリアのはみだしステーキバーガー(6日間の限定商品。1,200円。)
出典:ロケットニュース24(’https://rocketnews24.com/2017/11/24/986047/)
なぜ、他社が絶対にマネしない(できない)インパクトある商品を頑張って開発したのに、あまり売れないのでしょうか?
さらに永続的に販売せず、期間限定商品としてしまうのでしょうか?
任天堂のゲーム機スイッチのように、同じ独創的な商品なのに、なぜ馬鹿売れ続きで社会現象にならないのでしょうか?
その理由はとても簡単です。
忖度弁当(正式名称は忖度御膳)は価格が税込み798円であり、はみだしステーキバーガーが1,200円だからです。
毎日お昼ご飯に1,200円のはみだしステーキバーガーを買う人はいるでしょうか?いるとは思いますが、日本人の1,000人や1万人に一人くらいの割合になってしまうでしょう。
お昼ご飯にそんな多額のお金を出せる日本人は少ないのです。
逆に、任天堂のゲーム機スイッチは、学生がお昼休みにみんなでやっていてもコストは0円です。電気代しか掛りません。
毎日のお昼休みにスイッチで遊び楽しい時間を獲得することはできても、お昼ご飯に忖度弁当やはみだしステーキバーガーを食べ続けることはできないのです。
つまり、大ヒット商品はコストパフォーマンスが非常に高いのです。だから毎日売れ続ける。コカコーラ、ヘルシア緑茶、カルビーのポテトチップス、任天堂のスイッチ。
ここら辺は価格設定がとても適切なのです。奇抜さや他社がマネできないというただそれだけの理由で、商品を販売してもまったく売れないのは、プライジング(値付け)が間違えているからなのです。
逆説するとインパクトのある商品だから利益率をもっと高くしちゃおう。どうせ期間限定商品で新聞やテレビに載るから広告宣伝費を削減することができる。
あまり売れないのは(知っているけど)広告費の削減になるから自社にはプラスにしかならないという食べ物で遊ぶ合理性を企業幹部が保持し、販売に乗り切ったことが、手に取るように分かってしまうのです。
だから馬鹿だなあ。と思うのです。
では、ハンバーガー1,200円の単価のように利益率を高くして、それでも爆発的に大ヒットさせるにはどうすればいいのでしょうか?
これはとても簡単なのです。こっち側をやっている人は頭が良いです。ユーザーニーズを鑑みて利益率が高くても、ていうか、価格なんて幾らでも払うからどうしてもほしい。
という消費者向けに限定商品を開発し、販売すればいいのです。超簡単なのに、あまりそこまで思考する経営者はいません。
熱狂的なファンを持つまでのプロセスを戦略的に思考しないためでもあるのですが、思考力が薄いなあと思います。
たとえば、初音ミクの浮世絵(限定100枚)は、一瞬で売り切れになりました。
価格は48,600円(税抜き)なのに、です!
■初音ミクの浮世絵
浮世絵の拡大画像
版画は、1枚の木型を作ったら、2枚目以降の製造原価は用紙代しか掛らず、利益率はほぼ100%になります。
極めて卓越した経営センスとマーケティングセンスを持っていることが分かります。
そして限定販売なのに3度も限定販売をし、もはや限定ではなくなっている事実がある。
秀逸なマーケティング(継続的な売上増のための活動)ができている。
出典:ホビーストック社の浮世絵木版画シリーズ(http://www.hobbystock.co.jp/ukiyoe/)
この浮世絵のコスト(製造原価)は48,600円も掛ってはいない。忖度弁当やはみだしバーガーと同じビジネスモデルなのにです。
だけど、飛ぶように売れに売れまくるのです。
その理由は、熱狂的なファンが要るかどうかの違いにあります。
つまり、大ヒット商品とは、任天堂スイッチやコカコーラのように、競合のソーシャルゲーム(課金ゲーム)と比べて著しく安く、その為コストパフォーマンスが極めて高い、または、100円のコカコーラで100円以上の恩恵を受けられる。
(喉の渇きを他の商品よりも格安で癒せる)ものか、または、利益率が高くても、金なら幾らでも払うからどうか私に売ってほしいという、AppleのiPhoneや初音ミクの浮世絵のように、
熱狂的なユーザーがおり、マネのできない商品開発をしているかのどちらかなのです。もちろん、例外となる市場も当然存在します。規制市場と独占市場、そして寡占市場です。
(たとえば独占市場は、MicrosoftのWindowsやインテルのCPUのように、年に2兆円以上の研究開発費を支出し、他社に競走することを諦めさせ、好きに値付けできるほどに技術独占している市場です)
奇抜で他社がやらない製品を作ったからと言って売れるのではない。そうではなくて、他社がマネしない、しかも熱狂的なユーザーが付いているという2点が揃って初めて大ヒット商品になり得るのです。
AKB48商法も同じで熱狂的ユーザーが金なら幾らでも出す!と言うから、価値のないCDが売れまくるのです。
たとえ奇抜な商品でも、ユーザーニーズがなければ商品はまったく売れません。忖度弁当とはみだしバーガーを見て私が瞬時に思考したのは、このことなのです。
卓越した経営センスを持ってはいないなあと思ったのです。
そして初音ミクの浮世絵は限定第三版も既に売り切れてしまいw、300枚も売ったのにまだ欲しいユーザーがたくさんおり、その状態でも買えないのです。
■第三版も完売している。
出典:ホビーストックオンラインショップ(http://www.hobbystock.jp/item/view/hso-ccg-00002281?ga=co_ukiyoe)
買えなければ買えないほど企業のブランド力は上昇していく。
そして、浮世絵を第四版第五版と再販し、ブランド力を低下させるよりも、売上が入ってこなくても、そのままにしておくほうが後々の価格設定において利益を多く得られる。
(高い価格設定でも今後も売れる)と企業が合理的に判断したため、売り切れのまま再販させないのです。
実に卓越したマーケティングと経営センスであると言えます。
期間限定の忖度弁当やはみだしバーガーとは、経営者の実力が違いすぎるのです。とても優秀な経営者が経営していることが分かる事象との対比なのでした。
関連エントリー:独占企業はどうやって生まれたのか(前編)
PS:この関連エントリーは、技術独占企業インテルの創設秘話が描かれたものです。