障害者新聞

目と耳の障害者が作った新聞です。社会の本質を書いています。

大局観は企業も人も、必須のスキルです(前編)。

大局観をもった人とはどんな人であり、普通の人とどう違うのか?

少し書いてみようと思います。


☆☆☆


大局観とは「物事の先々のことを見通す力」のことです。


人間は人生において数多くの選択を迫まれますが、その時々において先送りせず、全体的な利益を鑑みて、選択していくスキルのことを言います。


昨年の夏、私はブログを開始しました。2016年の夏は猛暑であり、自宅のアパートはエアコンが壊れていることを私は夏前に知っていました。だけど、仕事に夢中でエアコンの修理をしませんでした。


目先の利益である、仕事の成果を重視し、エアコン修理のための手続きに時間を割くのを惜しみました。


先々のことを考えていれば、このときに手を打っておくべきだったと、1年後のいまでも、猛省しています。


猛暑のなかエアコンが故障しているのに普段どおり自宅でモーレツな労働時間を消費したため、私は喉が腫れてしまい、慢性的な扁桃腺(へんとうせん)になってしまいました。


1年後のいまでも喉が腫れており、治療しても治らず、ツバを飲むときに、いつも違和感を感じています。


目先の利益にとらわれず、全体を見通して常に先手を打っておけばこの病気を患うこともなかったし、なにより治療のために何度も病院へ行き、時間を消費することもなかった。


あのとき、論理の数手先まで見通しておき、大きなリスクが発生する可能性がある分岐においては、リスクを切る(エアコンを夏前に修理しておく)選択肢を選び抜いておけば、いまの軽度な喉の腫れは防げたのです。


次に大局観のない企業のモデルケースを見て行きます。三菱自動車ルノーグループに吸収合併させられたのは、燃料偽造の不正を国土交通省から隠蔽していたためです。


三菱自動車の社長は子会社の給与を安く抑え、低賃金労働者に燃料データの集計をさせていました。


短期的に見れば、簡単な仕事は子会社へ押し付け、旨味の汁の沢山出る仕事を親会社が担当するのは、日本の企業慣行としては、よくあることです。短期的に見れば、これが一番利益が出ます。


日本の雇用慣行は正社員を解雇できないので、能力の低くなった親会社の社員を子会社に送り込み、親会社と子会社の給与体系をいじることで、親会社で部長職をしていたものの、成果の出せなかった能力の低い人間を、子会社で本部長の席に天下りさせます。


そして、給与体系をいじることで、以前よりも給与の引き下げを行い、コストの削減を行います。


日本の大企業でよく行われている雇用慣行がこれです。能力の低い社員が本部長に天下りするため、子会社の優秀な社員は絶望感を感じてしまうことと、子会社ではどれほど能力が高くても、親会社が天下りの反対の行為である引き抜きを行わないため、上司のほうが能力が低くなってしまい、子会社の生え抜き社員の昇進がある一定のところより上にいけないことから、子会社では職場に絶望感が広がり、陰湿な空気のなかで仕事をすることになります。


そのため、子会社の社員ほど企業に対する忠誠心が薄れ、燃料データの集計のような簡単な仕事を優秀な子会社の社員にやらせると、しばしば彼らは自分の頭脳と比べて極めて簡単な仕事をやらされていることから、それに気づき、手を抜いて仕事をするようになるのです。


そうして起きた子会社の燃料データの偽造が大々的にマスコミに報道され、三菱自動車の株価が暴落し、ルノーグループに買収されるという会社が消滅するほどの極めて大きなリスクが発生したのは、経営者が中長期的な視点に立脚せず、目の前の利益に眼がくらんだためです。


日本の経営者は大局観がまるでないため、二次請け、三次請けの子会社、孫会社が現場で何をしているのかを把握していません


子会社、孫会社の社員が不正に走るまでの人間心理を給与の削減をしておきながら、理解できていません。安易なコスト削減にだけ走ることから、全体のメカニズムを思考するという行為を取りません。


よって、会社別に給与体系を変更することで、コスト削減のメリットが得られる替わりに、民の天下りによる大きなリスクを会社が背負い込むことを、彼らは理解できていないのです。


彼らはいままでもそれで利益が出ていたからという、過去の成功体験にすがりつき、自らは思考せず、過去の成功体験がどれだけのリスクを孕んでいたのかの検証をしません。


常に思考を停止させたまま、今まで通り簡単な仕事は子会社の低賃金社員に押し付けるという子会社社員の感情を平気で無視した企業慣行を続けているから、元からあった爆弾が爆発するのです。


短期的には利益が出ても、中長期的には、そこに大きなリスクが孕んでいることを、大局観のない彼らはまるで理解していないのです。


後編へ続きます)