障害者新聞

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歩きスマホと犯罪者のインセンティブ理論について

最近のニュースで歩きスマホしている人が引ったくりに遭(あ)ったり、タックルされて怪我をさせられる事件が多発しています。


☆☆☆


記事を読むと、犯罪者が悪い。犯罪者は歩きスマホの人を狙うのを止めよう。


歩きスマホして少し社会に迷惑掛けているだけの人間でも、彼らから引ったくりをすれば、それはもう立派な犯罪だ。


というのがネットニュースの論理となっています。自分的にぼんやり思考していて、ネットのニュースってほんとうに劣悪で思考力が極めて低いんだなと思っています。

なぜなら、この論理は被害者側の論理でしかないためです。


加害者の犯罪を防止するには、加害者側の犯罪心理を思考し、先読みする必要があるためです。


たとえば、ミクロ経済学はそれぞれの勢力がどのように動くのかを予測する学問です。

そのなかでもっとも使える理論が「インセンティブ理論」です。


このインセンティブ理論は歩きスマホを狙った犯罪者の心理にも適用できます。


たとえば、窃盗犯のなかで警察官のお財布を盗む人間がどれくらいいるでしょうか。また、交番の前でひったくりをする犯罪者がどれだけいるでしょうか。


警視庁の「事件事故発生マップ」を見ると、交番の周辺の犯罪はほぼ0です。犯罪者は交番の目の前で犯罪を犯したりしません。


放火犯も交番の目の前の建物を放火する人間はいません。だから、交番の周辺は地価が上昇するのです。なぜなら、警察に捕まると損をするのを彼らは知っているからです。


では、どういうときに、犯罪者は引ったくりや窃盗をするでしょうか。


こんなの超絶簡単です。捕まる確率が低いとき、引ったくりの成功確率が高い相手に、高い場所で、犯罪を犯すのです。


だから、成功確率がもっとも高い歩きスマホで意識がスマホへと行ってしまった人間ばかりをターゲットにして、逃げやすい人ごみの中で極めて高い成功確率を確保しているのです。


少し考えればこんなこと誰でも分かると思うのに、それぞれの個人がどう動くと利益の最大化ができるのかを合理的に人は思考して同じ方向に一斉に動いているからインセンティブ理論が適用できるのに、こんな経済学の初歩理論の知見すら、ネットのニュースは持ち合わせていないのです。


「犯罪をやめよう!」と言っても、彼らはやめてはくれません。なぜなら、彼らはお金に困っているからです。


200回300回と就職活動で落ちるなら、目の前の歩きスマホをしている女性のバックを引ったくったほうが「お得だ」と考えるから犯罪を犯すのです。


よって、好景気になると窃盗や引ったくりは減ります(当たり前です)。また、貧困地域や格差の大きい国のスラムでは犯罪は増えますし、格差のほとんどない先進国では少なくなります。


正義感からやめようと言うのであれば、犯罪予備軍の無職者全員の生活の面倒を見れば言いだけなのです。


でも、誰もそれをやらず、正義感だけを振りかざすから、言葉は無意味であり欺瞞(嘘偽りのこと)に、つまり、空疎に聴こえてしまうのです。


個別の人々が理解しておくべきことは、歩きスマホは楽しいし、快楽だけど、犯罪者側の心理から見ると、自分は良いカモに見られていることを自覚することです。


そして、歩きスマホによる快楽にふける楽しさのほうが、引ったくりに遭う損失よりも大きければ歩きスマホを続ければいいし、少なければ歩きスマホを止めればいいだけの話です。


それは個人の自由意志であると私は考えます。


犯罪者にやめようと言ったってここ20年続く不景気が改善しない限り、彼らはやめません。お金に困っているのだから当然です。


その言葉は空疎です。ならどうすれば犯罪に遭い難いのかを少し考えて行動すれば、少しの自衛で高い利益が獲得できることくらい知っておくべきなのです。

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